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はじめに

この文書では、ASTEのOn-The-Fly (OTF)観測システムについて解説します。 詳細は Sawada et al. 2008, PASJ, 60, 445 (arXiv:0712.1283) をご参照ください。

OTF観測とは、 観測領域を連続的にスキャンしながら短い時間間隔でデータを取得していく マッピング観測の手法です。 通常のposition switch観測と比較して、以下のような利点があります。 ビームに比べて十分広い領域を比較的浅い積分で掃く場合に、とくに効果を発揮します。

以下のようなドキュメントも参照してください。

OTF観測におけるスキャンパターンの概念図を図1に示します。 図中「on-source」とあるのがスキャンの本走(以下、単に「スキャン」と呼ぶ)で、 この間アンテナは一定速度で駆動され、 0.1秒(ACG)または0.2秒(WHSF)間隔でデータの取得が行われます。 スキャン中にアンテナが目的の方向を向くよう、 各スキャンの前に「approach」(助走)が入ります。 スキャンとスキャンとの間にOFF点が入らない場合(図1-1下)には スキャン終了点からapproach開始点への移動「transit」が入ります。 以上は連続波のraster観測の場合と同様です。 approachおよびtransitには、それぞれ4秒, 2秒をかけることを推奨します (ASTE会議2005/03/10資料を参照)。

通常のposition switch ("step-and-integrate")観測と同様、 観測の最初および適当なタイミングに"chopper-wheel"キャリブレーション(R-SKY)データを取得する必要があります。 OFF点は各スキャンの前、あるいは数スキャンに1回の割合で取得します。

Fig. 1-1: scan pattern
図1-1:スキャンパターンの概念図。 () 観測シーケンス「1*」 (OFF-ON)の場合、 () 観測シーケンス「1**」 (OFF-ON-ON)の場合。

観測の結果として、Nyquistレートより細かい間隔で取得されたデータ点によって マップ領域が埋め尽くされます。 データ点は規則正しいグリッド上には並ばないので、 convolutionをかけることにより正方格子のマップを作成します。 リダクションソフトに実装されているconvolution関数は以下のとおりです(図1-2):

Fig. 1-2: Convolution functions
図1-2:実装済みのConvolution関数 Bessel*Gauss (a=1.55/\pi, b=2.52), Sinc*Gauss (a=1.55/\pi, b=2.52), Gauss (a=1.0), Pillbox, Spheroidal (m=6, \alpha=1.0)。

last update: 2008-06-26