ASTEプロジェクトについて

Updated on Dec. 24, 2019

アタカマサブミリ波望遠鏡実験 概要

ASTE

アタカマサブミリ波望遠鏡実験 (Atacama Submillimeter Telescope Experiment, ASTE = アステ) は、南米チリ北部、アタカマ砂漠の標高4860メートルの高地に設置された、南半球では初の直径10mクラスのサブミリ波望遠鏡です。ASTEは、波長0.1mmから1mmの電波(サブミリ波)によって、私たちの肉眼では見ることのできない暗黒の宇宙を観測します。このプロジェクトは、国立天文台、チリ大学をはじめ、東京大学、北海道大学、名古屋大学、慶応大学、大阪府立大学、茨城大学、上越教育大学などの国内研究機関と共同でおこなわれており、南半球において本格的なサブミリ波天文学を推進するとともに、 それを支える観測装置や観測手法の開発を実証することを目的としています。現在、波長0.87 mm (周波数350 GHz)での本格的なサブミリ波天体観測が行われています。世界各国の天文学者も多数観測におとずれ、ASTE望遠鏡のすぐれた観測性能は、非常に高く評価されています。

ASTEサイト

ASTE望遠鏡は、チリ北部のアタカマ砂漠、標高 4860 m の高地、パンパ・ラ・ボラ (Pampa la Bola)に位置しています。国立天文台をはじめとした世界各国のグループが、1994年からサブミリ波の観測条件を精力的に調査してきました。この結果、この場所が、大気の透過率のきわめて良好な世界屈指のサブミリ波観測サイトであることが知られるようになりました。現在では、ASTEサイトの南西およそ10 kmとほど近い場所に、アルマ望遠鏡(ALMA、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)が建設されています。

ASTEサイトに立ってまわりを眺める

ASTE望遠鏡が見る宇宙

優れた観測性能とパンパ・ラ・ボラの卓越した観測条件を備えたASTE望遠鏡は、南天の観測により天文学や宇宙物理学のさまざまな分野において重要な役割を果たします。南天には、我々の天の川銀河の中心領域やマゼラン雲、そして天の川銀河のなかでも最も重い星のひとつであるりゅうこつ座イータ星 (Eta Carinae) など興味深い天体がたくさんあります。

ASTE望遠鏡を支える先進の装置

ASTE望遠鏡の10mアンテナは、長野県の国立天文台野辺山宇宙電波観測所での評価試験を経て、2002年3月に現在のサイトであるパンパ・ラ・ボラに移設されました。その後、サブミリ波観測を目指して、アンテナの性能向上の努力をつづけ、ASTEの10mアンテナは2秒角以内のすぐれた指向精度を実現しています。また、ホログラフィー測定という手法を用いて205枚の鏡面パネルを調整することで、アンテナ全体で誤差20ミクロン以下の超高精度の鏡面が完成しました。

ASTEでは、分光(おもに分子ガスから出る電波をとらえる)と連続波撮像(おもに塵から出る電波をとらえる)の2種類の観測が可能です。分光観測には、超伝導技術を応用したヘテロダイン受信機を摂氏マイナス269度(絶対温度4K)まで冷却して使います。この受信機は、アンテナのカセグレン焦点に直接装着されます。集められた天体信号は広帯域のデジタル分光計に伝送され、研究者により解析が行われます。現在では、CATS345受信機とALMAバンド8 評価試験モデルによる継続的な科学観測を実施しています。また、連続波観測としては、2007, 2008年度にAzTEC (アズテック)カメラが搭載され、大きな科学的成果をおさめました。AzTECは、米国マサチューセッツ大学、カリフォルニア工科大学、英国カーディフ大学、メキシコ国立天文・光学・電子工学研究所、世宗大学(韓国)の研究者により共同で開発されました。AzTEC は2008年末にASTEを離れ、現在はメキシコで建設のすすむ大型ミリ波望遠鏡 (LMT) に搭載されています。

ASTEでは、新しい受信機システムの開発が進んでいます。国立天文台 野辺山宇宙電波観測所、東京大学 天文学教育研究センター、北海道大学では、超伝導転移端センサ技術を利用した波長450ミクロン、850ミクロン、1100ミクロンの同時観測を可能にする連続波カメラ TESCAM (仮名) の開発をすすめています。また、東京大学 山本研究室では、電波と遠赤外線の境界領域に当たるテラヘルツ波と呼ばれる電磁波を検出する受信機の開発をすすめ、2011年に 0.8 THz で天体信号を検出することに成功しました。名古屋大学、国立天文台では、超広帯域分光計 WHSF の開発と高感度化に着手しています。

望遠鏡・装置の概要(研究者向けのページへ)

アタカマサブミリ波望遠鏡実験 詳細

ASTEプロジェクトの沿革

1994年
パンパ・ラ・ボラでのサイト調査開始。気象データの取得等をおこなう。
1999年
ASTEチーム結成。
2000年
ASTE望遠鏡を野辺山に設置。アンテナ鏡面精度などの測定作業をおこなう。
2001年
ASTE望遠鏡の移設作業(野辺山からチリへ)を開始。
2002年
ASTE望遠鏡をパンパ・ラ・ボラに設置。試験観測を開始。
2004年
本格的なサブミリ波(0.87 mm)分光観測を開始。
2007年
日本天文学会欧文誌(PASJ)にASTE特集記事を掲載、出版。
2007年
日米メキシコの共同研究による連続波観測を開始。
2010年
ALMAバンド8評価試験モデルの科学運用を開始。
2011年
テラヘルツ波受信機の試験搭載を実施。
2012年
新型多色連続波カメラの試験搭載を実施。
2017年
世界初のオンチップ超伝導分光器(DESHIMA)の試験搭載を実施。

ASTE望遠鏡を支えるスタッフたち

チリ観測所所長
浅山信一郎
ASTEマネジャー
阪本 成一
ASTE副マネジャー
鎌崎 剛
望遠鏡運用チーム
伊藤 哲也
木挽 俊彦
Aguilera, Javier
Zenteno, Javier
科学運用チーム
梅本 智文
Silva, Andrea
装置開発チーム
伊藤 哲也
藤井 泰範
藤本 泰弘
コンピューティングチーム
芦田川 京子
加藤 禎彦
前川 淳
松居 隆之
運用支援チーム
下田 隆信 (安全)
中西 孝 (物流)
西川 朋子 (科学運用支援)
平松 正顕 (広報)
チリ観測所・ALMAプロジェクト事務